パイナップルの涙

パイナップルの涙


賑やかな南国の

行き交う町の路面店

手書きのマジックで

値札がつけられ並んでる


手にした人の舌に湧いてくる酸味

期待したような甘み

そんな果実になった

そんな果実になるしかなかった

 

熱されたアスファルトのそばで

排気ガスを吸い込みながら

陽射しを裸で受けてきた

焼けた肌で

空ひとつ見上げないで

 

それでも実をつけたんだ

みんなが喜ぶフルーツをつけた

つけるしかなかった

 

君は

与えることで疲れてしまって

いつも無表情でうつむいて

長く伸びた影を踏まれないように歩く人

 

お願いだから

少しは僕たちを裏切ってくれないか

Rain


Rain

村で降れば喜ばれ
街で降れば嫌われる

あの星を隠していたのは
樹々たちを励ましていた夜

渇いた喉を潤す言葉で
乾いた心に沁みる涙を伝えた

運河を行く船を教えてはいけない
オアシスを想像することが大切なのだと

赤子はベビーベッドの窓から
雨粒が弾いた黒鍵で眠りについた

幼な子はお気に入りの長靴で
水たまりの弾力を確かめた

土砂降りの下校の時
わざと傘を忘れて帰ったのは
まるでショーシャンクの空を見上げる姿で
僕を僕に教えてくれたから

いつからか僕は大人になって
洋服を濡らされないように歩くようになった
道を選ぶようになった

歳を重ねた記念日に
そんなことをふと思っていた

どんなことが降り注ごうと
虹色に架かるように生きていかなくてはと

水域

思いが水域を越えたとき
溢れたしずくが言葉になる

発した言葉は気化していくが
人はそこに湿度を感じる

湿度はやがて風に消えていくが
空はそのことを憶えてる

搾りたての答えを
挽きたての勇気で運んでくれるんだ


届け 届け


願いには純度がある

願いには新鮮さがある

思いが水域を越えたとき
溢れたしずくが言葉になる

月のしずく

ブラインドの隙間から
星が覗いている

 

群青色の空
書き終えてない日記を
ゆっくりと閉じていく地平線

 

景色を飲み込んでいた霧が
朝と入れ替わっていく

 

濡れている道ばたは
月が落とした雫のようで
描けなかった自分に気付いてほしい

 

人は眠りの浅いときに
夢を見るものなのさ

 

たどり着いた場所を
スタート地点だと思えばいい

 

よく振り返ってみれば
追いかけてきてないものさ

僕であるために

宇宙のどこかに輝く真(まこと)
遠くの夢に重なる景色

僕らが出会ったことは必然らしい
因果応報とエネルギーの法則は
きっと同じ場所で生まれている

愛は透明の光
雲間から注ぐ金色の糸

ゆっくりと ゆっくりと
結ばれて解けていく人たちと
燃えて消える星たちはどこか似ている

鍵を握る天才科学者は
この世の最期に立った老人に勝てない

知ろうとすれば離れていく虚像の世界で
灰色のニュースペーパーに包まれても
たどり着きたい場所がある

 

僕であるために

雨の運動会

'雨の運動会'

雨ふりの中をオレンジ色の体操着が
ワンボックスカーから降りてくる

あわてて傘をたたんで
「おはよう」を交わす

ひとつの場所にいる複数
ハウリングしていた室内が
いつのまにか「みんな」へと成長していく

親の目に浮かぶものが光る
子どもの成長は嬉しくて切ない
けど「ありがとう」と言えること

子ども達には「ぼく大きくなったらね」と
思い描く未来ある

大人が選んだ道を歩くことはない
彼らは彼らのオリジナルでなくてはならないのだ

帰り道のハンドルにぎって橋を渡ると
影絵のような山並みに奪われていた

夕陽に惚れやすい空を見て
人がそんな頬なら世界は優しいと気づく

人の道は帰り道
忘れたことを思い出すように
さすらいながら今日を行く

グッドモーニング


'グッドモーニング'

季節がカーディガンを羽織った

布団からはみ出た爪先が
平泳ぎで毛布を探していると
レム睡眠を鮮やかに引き上げる太陽が
時計に腰かけながら顔をあらわす

都合よくツイートしているキャスター横目に
教育番組にチャンネルすると
ローストされたやさしい国語が
ジャムになってトーストを彩った

切り口の新しいデザートは
ひんやりと8:00の針を通過していった

朝が来て
朝が行ってしまった瞬間

玄関には木漏れ日が見える

今日を明日につなげる
テイクオーバーゾーンの扉を開けて

いまここ見つめて

グッドモーニング