愛の色

愛の色

子どもを高く持ち上げて
未来行きのカートに乗せていく

幸せの場所へ連れていきたいと
父親のシューズは泥にまみれて
母親は安いブラウスに袖を通している

子どもの一瞬は大人の何十年もの意味をもつ
その意味にどこまで向き合えるだろうか

母親の愛はときに復讐の顔をしている
そのとき

愛はいったい何色を着ているだろうか

とかさ

とかさ

今日は暑いとか涼しいとかさ
ゲリラ豪雨の予想がどうとかさ
今日は何時に帰ってくるとかさ
晩ご飯のメニューがどうとかさ
長男は今日も虫捕りだとかさ
次男は最近よく話すとかさ
三男の髪がふさふさだとかさ

 

消えるように進んでく毎日を
追われながら未来に向かっている

家族に書き込まれた経験を
シェアしながら今日を生きている

過ぎ去った後で振り返って幸せに気付く
そんなふうに終えていかないように

老いたとき懐かしい写真に止まる
そんなふうに今日をよく眺めてみる

とかさ
気づいていたいね

僕のすべて

僕のすべて

 


これまでの苦しみが ひとつの解放に弾けた

 

どれだけの過ちも ひとつの功績が救えるように

 


テープをきったランナーは

 

いつも光のベールを纏っている

 


限りない海を見渡す心で

 

果てしない空を見上げている

 


飲み終えた水筒から鳴った氷の儚さ

 

うまく仕舞えない折りたたみ傘のもどかしさ

 


なんにしろ生きるってことは

 

いつもどこかで満タンではない

 

 

割り切れない算数は

 

分母と分子で景色にしておくのが答えなんだ

 

 

続く梅雨空が欲しがる太陽と

 

真夏の焼けた土が欲しがる雨は

 

同義なのだろうか

 

 

あの弦楽器の名前を僕は知らない

 

ただ音色のやさしさは知っている

 

 

 

それがいまの僕のすべて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう 

 

 

 

 

僕たちは試されている

いまがいつなのか

ここがどこなのか

誰も知らない 知る術はない

 


絵本のはじめ

無表情の暖色ページを

息を飲みこみ見つめている

 


疾走の前に必要な距離がある

 

プロローグは必ずついてくる

 


いまはいつか あの頃になり


未来はいつか いまになる

 

 

夢なら幻想になって消えていくが


未来と呼べば近くになる

 


理想なら泡になってはじけるが


将来と呼べばがんばれる

 

 

言葉は生きている

 


言葉は動いている

 


僕らは動いている

 


立ち止まって見つめないこと


そして動いた軌跡だけを見ておけばいい

 

 

人はいつも試されている

 


過去に試されている

 


未来に試されている

 

 

 

 

 

 

 

 

美しいものを美しいと

他者を攻めることで自己を確認したい人がいる

きっとそういったひとつひとつに気付かずに

大人になってしまったのだ

 

美しいものを美しいと思う

 

朝日を浴びて

夕陽に想い

夜を閉じる

 


人はだれでも許せない昨日を憶えている

心の中にセーブされてると思い込んでいる

 

虚ろな図書館にふらふらと出かけて行って

やっぱり同じ書棚に手を伸ばしてしまうから

いつも同じ悲しみを持ってる気になってる

 

がらんどうの心に

コップ一杯の愛を汲みたい

ただそれだけなんだろうに

コントロール

紙芝居のクライマックスで

 

成敗される鬼たち

 

振り回している金棒は

 

弱さのサイズを表している

 

 

 

群衆が買い求めるのは

 

品種改良で頬を染めた果実

 

噛みしめて飲み込むあいだ

 

種が無いことに気付くことはない

 

 

 

もうブラウン管はすっかり改造されていて

 

モノクロ画質が

 

さもカラーであるかのように胸を張っている

 

 

 

記者がペン先に付けたいインクも指定され

 

気付かぬうちに太字にされて

 

印刷されている

 

 

 

人は視覚で読み取り

 

フレーズで学んでしまう

 

 

 

事実と現実と真実は同じ箱の中に入れられ

 

福引きの確率で

 

手にしなければならない

 

 

 


これから流れてくる言葉が

 

白くても黒くても

 

もうそれすらコントロールされたあとだろう

 

 

 

夏のある日から

 

「おはよう」で起きて

 

「おやすみ」で眠れるようになった

 

 

 

直感は僕を裏切らず

 

コントロールされることもない

 

 

 


そろそろ気付いてもいいだろう

 

すべては

 

僕のポケット

大切なものを半ズボンに込めて

ポケットを気にしていたあの頃

なにを大切にしていたのか

 

割り切れる算数が好きだった

いまは難しい問いかけの前で

動けなくなってしまった

 


僕はいま何年生なんだろう?

 


いつも半袖でいたかった

 


靴飛ばしで空を測って

夢を描いていた

 

あの時の涙が

いまを彩る絵の具になった

 

どんな空しさも

アイスクリームで消せたあの日

 

次の授業へ黒板をリセットするように

僕らはあの頃を消してきた

 

長袖とセーターと

防弾チョッキを重ね着にして

走れなくなった

 

金網ばりの公園で

額縁の中の自由と

窓枠から見えた開放に

等式のような答えを与えられた

 


たいていの問いかけは

解答をめくって写せばいい

そうみんなが教えてくれる

 

僕には

あの頃飛ばしたシューズが

空に浮かぶあいだに見ていた未来がある

 

「まだ子ども」と「もう大人」は

グラデーションでつながってるんだ

 

ネガに押し込まれた歴史を

持ち歩くほど大きくはないのさ

 

僕のポケットは