国籍

あの人は挨拶を大切にして
あの人は人と距離をとり
あの人は休日に力を入れて
あの人は言葉に操られている

人と人との間で動くボールは
リズムが狂うと心に響く
響き続けて疲れてしまう

僕とあいつは国籍が異なる
性格や態度で捉えないでいいのだ

国と国とですべてが正しいように
あの人も
僕も
正しい

それでいいのだ

"味方するもの"

コンクリートのひび割れから
咲いたひとつの花

種子のパラシュートが
その隙間に降りたとき
迷わずつま先を土の中に入れた

風はその時間だけ止まり
発芽を応援したんだろう

朝露がひとしずく頭を撫でる
「もう大丈夫だよ」
そんな言葉を言われた気分


迷いがない
直感的な先手を神様は好む

立ち止まらず出した答えに
味方するなにかがいる

科学で説明できない質問の
宇宙の中での正解だ

つまりはロマンが大切なのさ
僕らの行く道

"愛の人"

愛の人

手のひらで守りたかった花があった
嵐の中でそっと握りしめて
おだやかな風の吹く あの場所へ着いた

その花が崖の上に咲いていたのか
花屋に並んでいたのか
詳しいことはわからない

手を開いてみたら潰れていた花
滲んで染み付いてたピンク色

マジシャンみたいに取り出せなかった
僕の昨日だ

 

経験は人生を彩ると人は言うが
もうそれを聞きたくないんだ

走り続けるワーカホリックは
涙色の過去を束ねてみたい

引き出しにしまった
ラブレターみたいに捨てられない
僕の昨日だ

 

空をいく飛行機が好きだ
見上げた時にふわりと浮かぶ
君がいる

 

君が毎朝ランドセルを背負って
待ち合わせの友達と
朝を行く

僕は眠たい瞼を持ち上げて
きっといつか きっといつかと
走っていたい


走り続けてきた僕の道は
どこへ続いてるんだろう


「いつもいつも思い出してる
いつもいつも想っている」

白いインクで書いた手紙
切手を貼らずにポストに入れてみる
そのとき少しだけ僕の心が近くに行ける

 

僕はもうすぐ歩けなくなりそうなんだ
思い出してたら進めないんだよ
もうこれ以上

少しだけ忘れてもいいかな

宝箱にそっと しまっておくように

 

"メダル"

"メダル"

掴まなければならない者
掴んでみたい者

手にした人によって
輝きを変えるメダル

地平線で分かれた空と海のように
どこまでも交わらない

空と海は同じクレヨンだけど
まったく別の意味がある

景色の中に区別の中で
重なり合っている

手にしたい幸せのように
求めては逃げていく
掌の中で変わってしまう

あの人もこの人も追いかけている
輝きはどこかと慌てている
きっといつかと求めていく

同じ窓から
星空を眺める人がいる
地面を見つめる人がいる

窓に映るあいつは
こっちを見ていて何を思うのか

 

"8月4日の午後の決断"

"8月4日の午後の決断"


僕は普通でありたいようで

特別でもありたい

 

思春期のあいつの影には引力があって

自転している少年たちを

どうして近くに引き寄せたのか

 

混ざり合う想いをひとつにする

それを型抜きにして

焼いたクッキーを食べてみたい

 

体は退行していくけど

心の進化は止まらない

戻っているようで進んでいる小舟に乗って

 

いつか空のように大きな愛で

大切なことを見渡してみたい

 

生まれ変わるそのまえに

大切なことを思い出したい

 

混ざり合う想いをひとつにする

それを型抜きにして

焼いたクッキーは格別だったはずだ

 

余計な荷物を捨てるところから

新しいことがはじまると知っている

 

 

 

そんなことを考えた熱暑の午後

どうして麦茶は氷を鳴らしたのか

 

少年が夕暮れに見た自分の影に向かって

蹴り飛ばしたソーダの空き缶のような

からんころんという音を立てて

"恐竜のバラード"

"恐竜のバラード"

 

ポーズをとる間もなく

ゴングがなった

拳を合わせる前に殴られた

 

面喰らったと言えば、その通りかな

僕はすぐにディフェンスの構えを取った

が、相手の姿は消えていた

 

トレーニングを積んで仕返すか

上手に忘れていくのがいいのか

解答例を探してる

 

まるで恐竜がバラードを唄ってるみたいだな

 

こんなに殴り返したいのに

殴り返されるのがとても怖い

 

パトカーの横でぎこちない動きの僕は
いつもなにかを気にしている

歴史を学んで盾を大きいものに持ち変えた

すべての誤りはそこだった


そろそろ僕を生きてみようか

過去と未来の僕をつなぐ

僕だけを生きてみようか

"僕と僕"

"僕と僕"

 

僕はとケンカばかりしている

 

時々勝つこともあるが

だいたいは打ち負かされている

 

勝ったときは大抵自分の力ではない

闘うしかなかったときにだけ
誰かの後押しがあった

 

 

僕は僕を尊敬できるようになりたい

 

「がんばれ」ではなくて「がんばってるね」と言われたい

 

立ち止まってても肯定してくれないか

また走り出すまでゆっくり眺めていてほしい

 

僕は命を未来へ運んでいる

過去からつづくコンベアを動かしている

 

君がいると走れそうだ
みんなと違う僕を見てる

 

僕は僕に勝てるようになりたい
いつか叶うその時も

 

君はやっぱり眺めてるはずだ