グッドモーニング


'グッドモーニング'

季節がカーディガンを羽織った

布団からはみ出た爪先が
平泳ぎで毛布を探していると
レム睡眠を鮮やかに引き上げる太陽が
時計に腰かけながら顔をあらわす

都合よくツイートしているキャスター横目に
教育番組にチャンネルすると
ローストされたやさしい国語が
ジャムになってトーストを彩った

切り口の新しいデザートは
ひんやりと8:00の針を通過していった

朝が来て
朝が行ってしまった瞬間

玄関には木漏れ日が見える

今日を明日につなげる
テイクオーバーゾーンの扉を開けて

いまここ見つめて

グッドモーニング

愛の色

愛の色

子どもを高く持ち上げて
未来行きのカートに乗せていく

幸せの場所へ連れていきたいと
父親のシューズは泥にまみれて
母親は安いブラウスに袖を通している

子どもの一瞬は大人の何十年もの意味をもつ
その意味にどこまで向き合えるだろうか

母親の愛はときに復讐の顔をしている
そのとき

愛はいったい何色を着ているだろうか

とかさ

とかさ

今日は暑いとか涼しいとかさ
ゲリラ豪雨の予想がどうとかさ
今日は何時に帰ってくるとかさ
晩ご飯のメニューがどうとかさ
長男は今日も虫捕りだとかさ
次男は最近よく話すとかさ
三男の髪がふさふさだとかさ

 

消えるように進んでく毎日を
追われながら未来に向かっている

家族に書き込まれた経験を
シェアしながら今日を生きている

過ぎ去った後で振り返って幸せに気付く
そんなふうに終えていかないように

老いたとき懐かしい写真に止まる
そんなふうに今日をよく眺めてみる

とかさ
気づいていたいね

僕のすべて

僕のすべて

 


これまでの苦しみが ひとつの解放に弾けた

 

どれだけの過ちも ひとつの功績が救えるように

 


テープをきったランナーは

 

いつも光のベールを纏っている

 


限りない海を見渡す心で

 

果てしない空を見上げている

 


飲み終えた水筒から鳴った氷の儚さ

 

うまく仕舞えない折りたたみ傘のもどかしさ

 


なんにしろ生きるってことは

 

いつもどこかで満タンではない

 

 

割り切れない算数は

 

分母と分子で景色にしておくのが答えなんだ

 

 

続く梅雨空が欲しがる太陽と

 

真夏の焼けた土が欲しがる雨は

 

同義なのだろうか

 

 

あの弦楽器の名前を僕は知らない

 

ただ音色のやさしさは知っている

 

 

 

それがいまの僕のすべて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう 

 

 

 

 

僕たちは試されている

いまがいつなのか

ここがどこなのか

誰も知らない 知る術はない

 


絵本のはじめ

無表情の暖色ページを

息を飲みこみ見つめている

 


疾走の前に必要な距離がある

 

プロローグは必ずついてくる

 


いまはいつか あの頃になり


未来はいつか いまになる

 

 

夢なら幻想になって消えていくが


未来と呼べば近くになる

 


理想なら泡になってはじけるが


将来と呼べばがんばれる

 

 

言葉は生きている

 


言葉は動いている

 


僕らは動いている

 


立ち止まって見つめないこと


そして動いた軌跡だけを見ておけばいい

 

 

人はいつも試されている

 


過去に試されている

 


未来に試されている

 

 

 

 

 

 

 

 

美しいものを美しいと

他者を攻めることで自己を確認したい人がいる

きっとそういったひとつひとつに気付かずに

大人になってしまったのだ

 

美しいものを美しいと思う

 

朝日を浴びて

夕陽に想い

夜を閉じる

 


人はだれでも許せない昨日を憶えている

心の中にセーブされてると思い込んでいる

 

虚ろな図書館にふらふらと出かけて行って

やっぱり同じ書棚に手を伸ばしてしまうから

いつも同じ悲しみを持ってる気になってる

 

がらんどうの心に

コップ一杯の愛を汲みたい

ただそれだけなんだろうに

コントロール

紙芝居のクライマックスで

 

成敗される鬼たち

 

振り回している金棒は

 

弱さのサイズを表している

 

 

 

群衆が買い求めるのは

 

品種改良で頬を染めた果実

 

噛みしめて飲み込むあいだ

 

種が無いことに気付くことはない

 

 

 

もうブラウン管はすっかり改造されていて

 

モノクロ画質が

 

さもカラーであるかのように胸を張っている

 

 

 

記者がペン先に付けたいインクも指定され

 

気付かぬうちに太字にされて

 

印刷されている

 

 

 

人は視覚で読み取り

 

フレーズで学んでしまう

 

 

 

事実と現実と真実は同じ箱の中に入れられ

 

福引きの確率で

 

手にしなければならない

 

 

 


これから流れてくる言葉が

 

白くても黒くても

 

もうそれすらコントロールされたあとだろう

 

 

 

夏のある日から

 

「おはよう」で起きて

 

「おやすみ」で眠れるようになった

 

 

 

直感は僕を裏切らず

 

コントロールされることもない

 

 

 


そろそろ気付いてもいいだろう

 

すべては