グッドモーニング
'グッドモーニング'
季節がカーディガンを羽織った
布団からはみ出た爪先が
平泳ぎで毛布を探していると
レム睡眠を鮮やかに引き上げる太陽が
時計に腰かけながら顔をあらわす
都合よくツイートしているキャスター横目に
教育番組にチャンネルすると
ローストされたやさしい国語が
ジャムになってトーストを彩った
切り口の新しいデザートは
ひんやりと8:00の針を通過していった
朝が来て
朝が行ってしまった瞬間
玄関には木漏れ日が見える
今日を明日につなげる
テイクオーバーゾーンの扉を開けて
いまここ見つめて
グッドモーニング
僕のすべて
僕のすべて
これまでの苦しみが ひとつの解放に弾けた
どれだけの過ちも ひとつの功績が救えるように
テープをきったランナーは
いつも光のベールを纏っている
限りない海を見渡す心で
果てしない空を見上げている
飲み終えた水筒から鳴った氷の儚さ
うまく仕舞えない折りたたみ傘のもどかしさ
なんにしろ生きるってことは
いつもどこかで満タンではない
割り切れない算数は
分母と分子で景色にしておくのが答えなんだ
続く梅雨空が欲しがる太陽と
真夏の焼けた土が欲しがる雨は
同義なのだろうか
あの弦楽器の名前を僕は知らない
ただ音色のやさしさは知っている
それがいまの僕のすべて
ありがとう
僕たちは試されている
いまがいつなのか
ここがどこなのか
誰も知らない 知る術はない
絵本のはじめ
無表情の暖色ページを
息を飲みこみ見つめている
疾走の前に必要な距離がある
プロローグは必ずついてくる
いまはいつか あの頃になり
未来はいつか いまになる
夢なら幻想になって消えていくが
未来と呼べば近くになる
理想なら泡になってはじけるが
将来と呼べばがんばれる
言葉は生きている
言葉は動いている
僕らは動いている
立ち止まって見つめないこと
そして動いた軌跡だけを見ておけばいい
人はいつも試されている
過去に試されている
未来に試されている
美しいものを美しいと
他者を攻めることで自己を確認したい人がいる
きっとそういったひとつひとつに気付かずに
大人になってしまったのだ
美しいものを美しいと思う
朝日を浴びて
夕陽に想い
夜を閉じる
人はだれでも許せない昨日を憶えている
心の中にセーブされてると思い込んでいる
虚ろな図書館にふらふらと出かけて行って
やっぱり同じ書棚に手を伸ばしてしまうから
いつも同じ悲しみを持ってる気になってる
がらんどうの心に
コップ一杯の愛を汲みたい
ただそれだけなんだろうに
コントロール
紙芝居のクライマックスで
成敗される鬼たち
振り回している金棒は
弱さのサイズを表している
群衆が買い求めるのは
品種改良で頬を染めた果実
噛みしめて飲み込むあいだ
種が無いことに気付くことはない
もうブラウン管はすっかり改造されていて
モノクロ画質が
さもカラーであるかのように胸を張っている
記者がペン先に付けたいインクも指定され
気付かぬうちに太字にされて
印刷されている
人は視覚で読み取り
フレーズで学んでしまう
事実と現実と真実は同じ箱の中に入れられ
福引きの確率で
手にしなければならない
これから流れてくる言葉が
白くても黒くても
もうそれすらコントロールされたあとだろう
夏のある日から
「おはよう」で起きて
「おやすみ」で眠れるようになった
直感は僕を裏切らず
コントロールされることもない
そろそろ気付いてもいいだろう
すべては