"味方するもの"

コンクリートのひび割れから咲いたひとつの花 種子のパラシュートがその隙間に降りたとき迷わずつま先を土の中に入れた 風はその時間だけ止まり発芽を応援したんだろう 朝露がひとしずく頭を撫でる「もう大丈夫だよ」そんな言葉を言われた気分 迷いがない直…

"愛の人"

愛の人 手のひらで守りたかった花があった嵐の中でそっと握りしめておだやかな風の吹く あの場所へ着いた その花が崖の上に咲いていたのか花屋に並んでいたのか詳しいことはわからない 手を開いてみたら潰れていた花滲んで染み付いてたピンク色 マジシャンみ…

"メダル"

"メダル" 掴まなければならない者掴んでみたい者 手にした人によって輝きを変えるメダル 地平線で分かれた空と海のようにどこまでも交わらない 空と海は同じクレヨンだけどまったく別の意味がある 景色の中に区別の中で重なり合っている 手にしたい幸せのよ…

"8月4日の午後の決断"

"8月4日の午後の決断" 僕は普通でありたいようで 特別でもありたい 思春期のあいつの影には引力があって 自転している少年たちを どうして近くに引き寄せたのか 混ざり合う想いをひとつにする それを型抜きにして 焼いたクッキーを食べてみたい 体は退行して…

"恐竜のバラード"

"恐竜のバラード" ポーズをとる間もなく ゴングがなった 拳を合わせる前に殴られた 面喰らったと言えば、その通りかな 僕はすぐにディフェンスの構えを取った が、相手の姿は消えていた トレーニングを積んで仕返すか 上手に忘れていくのがいいのか 解答例を…

"僕と僕"

"僕と僕" 僕は僕とケンカばかりしている 時々勝つこともあるが だいたいは打ち負かされている 勝ったときは大抵自分の力ではない 闘うしかなかったときにだけ誰かの後押しがあった 僕は僕を尊敬できるようになりたい 「がんばれ」ではなくて「がんばってるね…

"朝の太陽"

僕がにぎりしめたハンドルは もうしばらく離したことがない 乗客は大勢だ いろんな景色を見てきたし 竜が飛び出しそうな嵐も経験してきた これだけ大勢なのだから ハンドルではなく 舵と呼んだほうが正しいだろうか はじめはよかったんだ ボートにはペースが…

“傷み”

大人になってからの旅路は幼い頃に奪われたものをいつも取り返そうとしている あの人もこの人もどこかに埋めてしまった悔しさをいまはもう思い出せないでいる 「ごめんな」と言われたい 「ごめんな」ではゆるせない 大人時代の3年間の経験は二歳児が3分間で…

“寝顔”

"寝顔"朝の先っぽで目が醒めるいま僕は睡眠の波間にいる 雨の音に気付いてしまった部屋で聴く雨音は どんなBGMより心地がいい もう一度ベッドに倒れることもできたがカーテンを開けるほうを選んだ 街の寝顔を見渡してみるコントラストを失った家々黙りこくっ…

“ファッション”

“ファッション” どうやら言葉がダイエットを始めたんだ言葉のぜい肉がそぎ落とされて歩きやすくなってきた 青年の頃のベルトをどこにしまっただろうかあのチノパンをとっておけばよかったこの革靴くらいは許されるだろうか 時間は流行を連れてくる流行は眩し…

”6月の太陽”

”6月の太陽” 追い抜きたい時 見上げてはいけない 埃の中を駆けていくこと 好機を待たないこと そうすれば逆転は必ずある 偶数で整えたいことが 奇数のように割り切れない そんな余りを握りしめ 「これでどうだ」と胸を張った 6月の太陽になりたい

“その女の子は泣いていた”

泣きながらサッカーしてる女の子がいた無表情で戦う女子チームベンチには指示を出し続ける2人の指導者保護者も一緒になってしまって2.1chスピーカーみたいだ 試合なんだから勝利は目指すものだけどその喜びのために大事なことをそぎ落としてきたら… 脱げない…

"家族"

"家族" ほこりっぽい服で家に着くと「おかえりなしゃい」の言葉が泡になって飛んできて僕の顔をはじいてくれる 春の花畑に 菜の花が咲くように僕の家には 待ってる人がいる 積み木みたいに崩したい昨日とレゴブロックのように残したい今日 そういえば季節は…