"愛の人"

愛の人

手のひらで守りたかった花があった
嵐の中でそっと握りしめて
おだやかな風の吹く あの場所へ着いた

その花が崖の上に咲いていたのか
花屋に並んでいたのか
詳しいことはわからない

手を開いてみたら潰れていた花
滲んで染み付いてたピンク色

マジシャンみたいに取り出せなかった
僕の昨日だ

 

経験は人生を彩ると人は言うが
もうそれを聞きたくないんだ

走り続けるワーカホリックは
涙色の過去を束ねてみたい

引き出しにしまった
ラブレターみたいに捨てられない
僕の昨日だ

 

空をいく飛行機が好きだ
見上げた時にふわりと浮かぶ
君がいる

 

君が毎朝ランドセルを背負って
待ち合わせの友達と
朝を行く

僕は眠たい瞼を持ち上げて
きっといつか きっといつかと
走っていたい


走り続けてきた僕の道は
どこへ続いてるんだろう


「いつもいつも思い出してる
いつもいつも想っている」

白いインクで書いた手紙
切手を貼らずにポストに入れてみる
そのとき少しだけ僕の心が近くに行ける

 

僕はもうすぐ歩けなくなりそうなんだ
思い出してたら進めないんだよ
もうこれ以上

少しだけ忘れてもいいかな

宝箱にそっと しまっておくように