Roots

Roots

通りすがりのやさしい風が
髪を撫でて抜けていった

僕は少しだけ心地よくて
誰かのための自分になれた

バトンをふたつに分け合って
次の人へ渡していく

ペイ・フォワードの少年に
近づいた気がしている

優しさはやがて膨らんで
気球になって運んでくれる

遠い空の向こうのほうへ
手を引く白い天使になって


波のルーツは
大地の自転が生んだ
海を撫でゆく風

小さな水面の震えが
もうひとつと足し算になって
かけ算になっていく

小さな集まりが続くと
大きな塊が息吹く
たとえばそれを海底の
スイミー作戦と呼んでみようか

この世界から
蜜蜂を守るようにと
アインシュタインは言う

人は文明を創ってきたが
生存には微生物が不可欠だ

大きな樹の下には
毛細血管状のホースが拡がる

張り巡らされた根は
長編ドラマの最後に
実をつけるのを待っている

昨日は 窓際の席で

校庭の中に見付けたよ


今日は 廊下で近づいて

会話のボリューム上げたんだ


放課後の靴箱で

明日もやっぱりすれ違いたい


シューズの不在を横目で見たら

校門飛び出し追いかけた


あの頃


毎日会えないと

恋のカロリー上がっていった


あの夏

フォークダンスの最後のほうで

重ねた手のぬくもり忘れないように

寝なかった僕だけの夜


桜の季節

ひそかに彫った 机の上の

イニシャルみたいに 深くてはっきりと


残しておきたい

僕の

恋の話

つまづきに肯けるその時まで

君へ

 

太陽は東から上がることを


いまだにやめない

 

立ち上がる時はいつだって


つまづいた後だ

 

僕はね


桟橋の見える景色の上に


数十年に1度の天体を待ったことがある

 

きっとね


生まれ変わる前の世でも


僕は黒い月を見てみたくて


やっぱり同じ景色にいたんだと思う

 

雲に覆われて見れなかったけど


想像は虚しさを薄めてくれた

 

想像したことはね


見えてる物事とは違った世界に在るんだと


そう考えてる人が多い

 

本当は現実と理想は


同じ糸で編まれた一本の帯みたいになって


同じ僕らを行き来しているのさ

 

暮れていくその向こうに


生まれ変わった明日を


想像してくれないか

 

美しい薔薇には棘がある


もし花だけが土へ帰った時に


残された棘はどう決断するのだろう

 

長くて狭いあの産道で


くぐり抜けた後に待つ光を


どうして君は知っていたのだろう

 

君のシナリオには


書き直すことは許されていない


書き加えることは認められている

 

いまひとりぼっちで歩いている君へ

 

このつまづきに肯けるその時まで

 

愛のレシピ

洗いざらしの心なら

乾きたてのように吸い込み

もぎたてのヒントで

搾りたての答えを見せる


おぼえたてのやさしさ読んで

入れっぱなしの感情を洗う

最後に挽きたての勇気でかき混ぜれば

ほかほかの愛が生まれる

 

 

国籍

あの人は挨拶を大切にして
あの人は人と距離をとり
あの人は休日に力を入れて
あの人は言葉に操られている

人と人との間で動くボールは
リズムが狂うと心に響く
響き続けて疲れてしまう

僕とあいつは国籍が異なる
性格や態度で捉えないでいいのだ

国と国とですべてが正しいように
あの人も
僕も
正しい

それでいいのだ

"味方するもの"

コンクリートのひび割れから
咲いたひとつの花

種子のパラシュートが
その隙間に降りたとき
迷わずつま先を土の中に入れた

風はその時間だけ止まり
発芽を応援したんだろう

朝露がひとしずく頭を撫でる
「もう大丈夫だよ」
そんな言葉を言われた気分


迷いがない
直感的な先手を神様は好む

立ち止まらず出した答えに
味方するなにかがいる

科学で説明できない質問の
宇宙の中での正解だ

つまりはロマンが大切なのさ
僕らの行く道

"愛の人"

愛の人

手のひらで守りたかった花があった
嵐の中でそっと握りしめて
おだやかな風の吹く あの場所へ着いた

その花が崖の上に咲いていたのか
花屋に並んでいたのか
詳しいことはわからない

手を開いてみたら潰れていた花
滲んで染み付いてたピンク色

マジシャンみたいに取り出せなかった
僕の昨日だ

 

経験は人生を彩ると人は言うが
もうそれを聞きたくないんだ

走り続けるワーカホリックは
涙色の過去を束ねてみたい

引き出しにしまった
ラブレターみたいに捨てられない
僕の昨日だ

 

空をいく飛行機が好きだ
見上げた時にふわりと浮かぶ
君がいる

 

君が毎朝ランドセルを背負って
待ち合わせの友達と
朝を行く

僕は眠たい瞼を持ち上げて
きっといつか きっといつかと
走っていたい


走り続けてきた僕の道は
どこへ続いてるんだろう


「いつもいつも思い出してる
いつもいつも想っている」

白いインクで書いた手紙
切手を貼らずにポストに入れてみる
そのとき少しだけ僕の心が近くに行ける

 

僕はもうすぐ歩けなくなりそうなんだ
思い出してたら進めないんだよ
もうこれ以上

少しだけ忘れてもいいかな

宝箱にそっと しまっておくように